かつて大人気だったコールド・ストーンが日本で残り1店舗に。
「歌うアイス屋」が受け入れられなかった意外な理由とは?
この記事でわかること
アメリカ発のアイスクリーム店「コールド・ストーン・クリーマリー」が、日本国内でついに1店舗だけになって しまいました。
2005年に日本上陸してから約20年、最盛期には全国に34店舗を展開していたのに、なぜここまで急速に衰退したのでしょうか?
その背景には日本人特有の文化や価値観が大きく関わっています。
特に「歌うサービス」と「共感性羞恥」という日本独特の感覚の相違点が鍵を握っていたのです。
✅ コールド・ストーンとは?日本上陸から衰退までの軌跡
コールド・ストーンは、マイナス9度に冷やした御影石の上でアイスクリームと様々なトッピングを混ぜ合わせる独特のスタイルが特徴です。
そして最大の特徴が、その作業中にスタッフが歌を歌うパフォーマンスでした。
2005年に東京・六本木に日本1号店がオープンすると「歌うアイス屋」として大ブームに。
店の前には長蛇の列ができ、あっという間に全国に店舗を拡大していきました。
⚠️ 意外な事実: 2023年6月にオープンした原宿の新店舗も2年足らずで閉店することになりました。
そして2025年5月現在、三重県の三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島店の1店舗のみが残っている状況です。
- コールド・ストーンの日本での変遷:
- 2005年:六本木に日本1号店オープン
- 2010年頃:最盛期で全国34店舗に拡大
- 2023年:原宿に新店舗オープン
- 2025年4月:原宿店閉店
- 2025年5月:佐野プレミアム・アウトレット店閉店
- 現在:三重県の1店舗のみ営業中
では、なぜこれほど人気だったコールド・ストーンが日本市場でほぼ消滅してしまったのでしょうか?次のセクションでその核心に迫ります。
🎵 衰退の最大の理由「歌うサービス」と日本人の共感性羞恥
コールド・ストーンの衰退を語る上で最も注目すべきなのが、「歌う」というパフォーマンスと日本人の気質との相性問題です。
店員が50種類以上もの歌を歌いながらアイスを作るスタイルは、アメリカでは大人気だったものの、日本では異なる反応を引き起こしました。
共感性羞恥とは、他人が目立つ行動をしているのを見て自分も恥ずかしく感じる心理のことです。
SNSでの声を見ても「歌ってるのを待ってる間、こっちが恥ずかしい…」「盛り上がってるのは店員さんだけ」「歌うのを断ったら気まずかった」などの意見が多く見られました。
日本では「目立ちたくない」「空気を読む」文化が根強く、突然ミュージカルのような空間に放り込まれることに抵抗を感じる人が多かったのです。
- 日本人が感じる「歌うサービス」の心理的ハードル
- 突然の注目を浴びることへの抵抗感
- 他のお客さんの目が気になる
- 「唾が飛ばないか」という衛生面の懸念
- サービスを受ける側としての受動的立場の崩壊
この能動的すぎるサービスは、静かに楽しみたい日本人の気質とミスマッチを起こし、リピート率の低下につながったと考えられます。
💡 あなたは店員が歌うようなパフォーマンス系のお店は好きですか?それとも恥ずかしさを感じますか?
次はその他の衰退要因を見ていきましょう。
💰 その他の衰退要因:価格帯・コロナ影響・オペレーションの複雑さ
「歌う」文化との相性以外にも、コールド・ストーンの衰退には複数の要因がありました。
💰 価格面での課題
コールド・ストーンのアイスは1つあたり700~800円という価格帯で、日常的に気軽に食べるには少々高めでした。
最近の閉店店舗でも「フィナーレ チョコレート デヴォーション」は780円(テイクアウトは842円)という設定です。
「コールド・ストーンって、年に一回のご褒美アイスだよね」という声も見られるように、「特別な日のスイーツ」というポジションから「日常使い」への転換ができなかったのです。
次にコロナ禍の影響。2020年以降の外出自粛や旅行控えは、ショッピングモールや駅ビルに多く出店していたコールド・ストーンに大きな打撃となりました。
特に「歌う接客」は感染対策の観点からも実施が難しくなりました。
- 1 スタッフ教育の複雑さ:「接客+歌+パフォーマンス+手作りアイス」という複雑なオペレーションは、アルバイトが多い店舗の運営を難しくしていました。
- 2 採用の難しさ:実際、採用時には「歌のオーディション」があったとの声も。
- 3 一過性の人気:長期的な集客よりも「話題性」が先行。
あなたは「特別な日のご褒美」として、少し高くても特別なアイスを食べに行きますか?それとも日常的に気軽に食べられるものを好みますか?
では、日本市場で外国発のサービス業が成功するには何が必要なのでしょうか?
🌏 日本市場における外国発サービス業の成功条件
コールド・ストーンの衰退から見えてくるのは、日本市場における外国発サービス業の成功条件です。
実は意外なことに、同じく「参加型」サービスで知られるサブウェイも日本では苦戦しました。
2014年をピークに10年で300店舗以上が閉店し、昨年にはワタミに日本事業を売却する結果となっています。
東洋経済オンラインによると「店員さんと話すことが珍しくない海外ではいいのだろうが、どうもこれが日本人だとアタフタしてしまう。『サブウェイ、野菜がたくさん食べられるからいいんだけど、オーダーがめんどくさくて…』と敬遠している人は多い」とのことです。
💡 日本市場で持続的に成功するための「3つの条件」
- 文化的適応力:日本の文化的特性(控えめさ、恥の文化など)を理解し、サービススタイルを柔軟に調整すること
- 日常使いできる価格設定:特別な体験は一度は魅力的でも、継続的な利用を促す価格帯の設定
- 持続可能なオペレーション:スタッフ教育や運営が無理なく続けられるシステム作り
日本で成功している外国発チェーン店(マクドナルドやスターバックスなど)は、いずれもこれらの条件を上手に満たしており、特に日本文化への適応を巧みに行っています。
⭐ 一方で興味深いのは、コールド・ストーンが日本に合わなかった最大の特徴である「歌う文化」こそが、アメリカ本国での差別化要因だったという点。
日本での成功を目指すなら、その「核」をどこまで変えられるかがカギとなります。
それでは最後に、コールド・ストーンの事例から見えてくる教訓をまとめてみましょう。
まとめ:文化的相違を乗り越えるサービスづくり
コールド・ストーンの日本市場での衰退は、単なるビジネスの失敗ではなく、文化的相違とサービス観の違いから生じた結果といえるでしょう。
最終的に衰退した本質的な理由は以下の通りです:
- 「歌う」パフォーマンスと日本人の共感性羞恥の不一致
- 日常使いしづらい価格帯の設定
- 複雑なオペレーションの持続可能性の低さ
- 「一過性の体験」から「継続的利用」への転換の失敗
- コロナ禍という外部要因
今後、外国発のサービス業が日本市場で成功するためには、その国独自の魅力を保ちながらも、日本の文化や価値観に寄り添った「適応戦略」が欠かせないでしょう。
現在も三重県の1店舗では営業を続けており、また高島屋などのオンラインストアでは商品を購入することも可能です。
一時代を築いた「歌うアイス屋」の体験を、あなたはどう感じましたか?
ぜひコメント欄で教えてください。
よくある質問
Q: なぜコールド・ストーンの「歌うサービス」は日本人に受け入れられなかったのですか?
A: 日本には「共感性羞恥」という、他人が目立つ行動をしているのを見て自分も恥ずかしく感じる心理があります。店員が歌うパフォーマンスが、静かに楽しみたい・目立ちたくない日本人の気質に合わなかったことが主な理由です。
Q: コールド・ストーンが最盛期に比べてどれほど店舗数が減少したのですか?
A: 最盛期には全国に34店舗まで拡大していましたが、2025年5月現在では三重県の三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島店の1店舗のみとなり、約97%の店舗が閉店したことになります。
Q: コールド・ストーンのアイスの価格が高いと言われる理由は何ですか?
A: コールド・ストーンのアイスは1つあたり700~800円という価格帯で、最近の閉店店舗では「フィナーレ チョコレート デヴォーション」が780円(テイクアウトは842円)という設定でした。これは日常的に気軽に食べるには少々高めで、「特別な日のスイーツ」というポジションからの脱却が難しかったと考えられます。
Q: 日本市場で外国発のサービス業が成功するための条件は何だと考えられますか?
A: 日本市場で持続的に成功するための「3つの条件」は、①文化的適応力(日本の文化的特性を理解し、サービスを柔軟に調整)、②日常使いできる価格設定(継続的な利用を促す価格帯)、③持続可能なオペレーション(スタッフ教育や運営が無理なく続けられるシステム)です。マクドナルドやスターバックスなどの成功例はこれらを満たしています。
Q: 現在も残っているコールド・ストーンの店舗はどこにありますか?
A: 2025年5月現在、日本国内で営業しているのは三重県の三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島店の1店舗のみです。また、高島屋などのオンラインストアでは商品を購入することも可能です。
参考情報
- 東洋経済オンライン: 「店員が元気よく歌う」→「待ってるこっちは恥ずかしい…」 一世を風靡するも、残り1店となった「コールド・ストーン」。衰退も"納得"の理由 ()
- 東洋経済オンライン: 《東京から消滅》一世を風靡した"歌うアイス屋"「コールド・ストーン」がまもなく残り1店舗に。最盛期は34店舗も、なぜ人気が定着せず? ()
- J-CAST トレンド: コールド・ストーン全国で続々閉店 残りは3店舗、東京からは撤退 ()